10月25日は、兵庫県議会議員補欠選挙・高砂市選挙区の投票日です。立候補しているのは、元副知事の片山安孝さんと、元高砂市議の島津明香さんの2人です。
島津さんの応援には、国会議員や県議会議員、市長、さらには県外の議員まで駆けつけています。「こんなに多くの政治家が応援しているのだから、きっとこっちが正解なんだろう」。そう感じた人もいるかもしれません。でも、少し立ち止まって考えてみてください。
はじめにお伝えしておくと、筆者は片山さんを応援しています。そのうえで、この記事で一番伝えたいのは「どちらに入れるか」より前の話です。
投票率が低いと、何が起きるのか
選挙には「組織票」と呼ばれる票があります。政党や業界団体、労働組合などが、まとまって入れる票のことです。組織票は、投票率が高くても低くても、ほぼ同じ数だけ投票所に届きます。
変わるのは、どこの組織にも属さない、普通の市民の票の数です。
たとえば、仮に組織票が1万票あるとします。投票した人が3万人なら、組織票は全体の3分の1を占めます。投票した人が5万人に増えれば、5分の1にまで小さくなります(数字は説明のための仮定です)。
県議補選は、投票率が低くなりがちです。2021年の宝塚市選挙区の県議補選では、投票率は28.71%でした。投票率が低いほど、組織票の比重は大きくなります。その結果、どこにも属さない多くの市民の「なんとなく、こう思う」という声が、選挙結果に届かなくなってしまうのです。
損をするのは多数派、得をするのは少数派
組織に支えられて当選した議員は、当選後、まずその組織のほうを向きがちです。次の選挙でも、その組織の力が必要だからです。その結果、予算、つまり私たちの税金が、応援してくれた団体や業界に手厚く配られやすくなります。
税金の使い道がかたよったとき、損をしやすいのは組織に属さない普通の市民です。そして数でいえば、こちらが圧倒的な多数派です。
ところが、その多数派が投票に行かないために、全体から見ればごく一部の組織の意見が結果を決めてしまう。すると「どうせ政治は自分たちのためのものじゃない」と感じて、ますます投票から遠ざかる。投票に行かないから声が届かず、声が届かないから投票に行かなくなる。これが今の政治の悪循環です。
この悪循環を断ち切る方法は、ひとつしかありません。組織に属さない市民が投票に行き、組織票に頼らずに戦う候補者に1票を投じることです。
なお、島津さん自身は、支援者に「他候補への批判ではなく、自分への応援を」と呼びかけています。この記事も、島津さん個人を批判するものではありません。問題にしているのは、投票率の低さが組織票の比重を大きくする、という仕組みです。
両候補の政策を比べてみよう
政策で選びたい人のために、両候補の主張を表にまとめました(届け出順)。
| 項目 | 片山 安孝さん | 島津 明香さん |
|---|---|---|
| 推薦 | なし(無所属) | 自民党県連(無所属) |
| 主な経歴 | 県庁38年、副知事など | 高砂市議3期12年、副議長など |
| 子ども・子育て | 安心して子育てできる街へ、県で培った施策を高砂に生かす。県立大学の無償化、不妊治療支援、奨学金返済の負担軽減など、若者向けの県の施策を評価 | 子どもを望むときから、子育て、教育、社会への一歩まで切れ目なく支える |
| 医療・福祉 | 福祉人材の待遇改善(国の基準への上乗せを模索)。高砂の新市民病院と、加古川・姫路の大きな病院とのネットワーク化で、県議として間に入る | 市民病院の再編を踏まえた地域医療体制の充実、医療・介護人材の確保 |
| 交通・移動 | 山陽電車の高架化による踏切解消、高規格道路(播磨臨海道路)の整備、宝殿駅への新快速停車の働きかけ | 播磨臨海地域道路の整備、市内の移動手段の確保 |
| 防災 | 播磨地域の広域的な治水対策、ため池の保全 | 道路・河川・急傾斜地など、暮らしを支える基盤の整備 |
| 産業・雇用 | 地元企業の資金繰り・経営革新の支援、福利厚生の充実、BtoB企業のPR支援を県に働きかけ。姫路・加古川との広域的な観光の調整を支える | 中小企業の人材確保や設備投資の支援、地域の実情に応じた土地利用 |
| 斎藤県政への評価 | 基本的に評価する。現時点で異議のある政策はない(点数はつけていない) | 50点。若者支援や教育への投資は評価する一方、県政運営の透明性や説明責任に課題がある |
※片山さんの欄は選挙公報、公式サイト、10月20日のネット番組「ReHacQ」の候補者討論会での発言、島津さんの欄は選挙公報と神戸新聞の候補者アンケートをもとに作成しました。片山さんは神戸新聞のアンケートに「回答しない」と返答しています。島津さんは「選挙期間中の日程がすでに決まっており、新たな日程の確保が難しい」としてReHacQの討論会に出演せず、片山さんのみの出演となりました。
この議席を長く務めた故・山本敏信さんは、2025年3月の県議会で、県立大学の無償化の議案の採決の際に退席しています。所属する自民党は会派として賛成していましたが、山本さんは議決に加わりませんでした(神戸経済ニュースの議決結果表による)。

島津さんは、山本さんの事務所があった場所で告示日の街頭活動を行い、山本さんから学んだことを語っています。一方で、神戸新聞のアンケートでは、斎藤県政の「若者支援や教育への投資」を評価できる施策に挙げています。
前任の山本さんが退席した県立大学の無償化のような議案で、推薦を受けた自民党の中に反対の声があっても、島津さんはご自身の判断で賛成票を投じるでしょうか。
県立大学の無償化のような、若い世代の暮らしに直結する議案に、議員としてどう向き合うのか。島津さんに投票を考えている方は、ぜひこの点を確かめてみてください。
扱っている分野は、両候補とも大きくは変わりません。播磨臨海道路の整備のように、共通する政策もあります。そのうえで、筆者が片山さんを推す理由を説明します。
筆者が片山さんを応援する理由
1つ目は、県の中身を知っていることです
片山さんは県庁で38年働き、副知事も務めました。県の予算がどこに流れ、どこに無駄があるかを、内側から知っています。税金の使い道をチェックする県議会議員の仕事に、この経験はそのまま生きます。
2つ目は、片山さんにしかない具体的な約束があることです
山陽電車の線路を高架にして踏切をなくすこと。朝の通勤時間帯だけでも、宝殿駅に新快速を止めるよう働きかけること。どちらも、毎日の通勤や渋滞に直結する話です。具体的な約束は、当選後に「やったか、やっていないか」を市民が確かめられます。
3つ目は、政党のしがらみがないことです
片山さんは、どの政党の推薦も受けていません。支えているのは、一人ひとりの市民による草の根のつながりです。組織への恩返しに縛られにくい議員は、組織に属さない市民の声を聞きやすい立場にあります。
4つ目は、自分の過去から逃げないことです
告発文書問題での対応には、今も厳しい批判があります。片山さんは選挙演説や討論会で、この問題に正面から向き合い、副知事を辞めた理由も自分の言葉で説明しています。片山さんは県政の混乱を受けて、知事に何度も「辞職するか、出直し選挙で県民の判断を仰ぐべきだ」と進言しました。それが受け入れられなかったとき、「誰かが責任を取らなければならない」として、自ら職を辞しました。人に責任を求めるなら、まず自分が責任を取る。その姿勢は、税金の使い道を預かる議員に必要なものだと考えます。
島津さんに入れようと考えている方へ
地域を歩き、声を聞き、県政に説明を求める。島津さんを選ぶ人が大切にしているその姿勢は、とても大事なものです。
説明責任について言えば、片山さんは辞職の理由を、演説や討論会で自ら語っています。そのうえで、県の予算と仕組みを知る即戦力であり、政党のしがらみもありません。
そして、今回選ばれる県議の任期は来年の春までです。どちらが当選しても、約半年後には統一地方選挙で再び審判を受けます。まずは半年、片山さんに任せてみて、その結果で判断してみませんか。
悪循環は、断ち切れる
知事選の構図が、この補選にもそのまま持ち込まれています。
そして兵庫県民は、この悪循環を断ち切った経験を持っています。2024年の知事選では、投票率は55.65%と、前回の41.10%から大きく上がりました。ふだん投票に行かなかった多くの人が投票所に足を運び、組織の予想をくつがえす結果を生んだのです。
あの知事選で1票を投じたみなさんなら、きっとできます。
「政治のことはよくわからない」「どうせ自分の1票では変わらない」。そう思って家にいることは、結果として組織票の力を大きくすることにつながります。選挙公報や候補者のホームページを少しだけ読んで、「この人なら任せてもいい」と思えるほうに1票を入れる。それだけで、どこにも属さない普通の市民の声が、選挙結果に届きます。
10月25日、高砂の未来を決めるのは、組織ではなく、あなたの1票です。

出典
- 兵庫県選挙管理委員会「令和8年執行 兵庫県議会議員高砂市選挙区補欠選挙 選挙公報」
- 神戸新聞「県議補選 高砂市選挙区 候補者アンケート」(2026年10月)
- ReHacQ「【ReHacQ討論会】兵庫県議補選高砂市選挙区ネット討論会」(2026年10月20日)https://www.youtube.com/watch?v=zxNr_YazKG0
- 片山安孝 公式サイト https://katayama-hyogo.com/
- しまづはるか X投稿「本日、兵庫県議会議員補欠選挙への立候補届を提出しました」(2026年10月16日)https://x.com/shimazu_haruka/status/2110897377074991350
- しまづはるか X投稿「出陣式の後は、高砂町銀座商店街前にて街頭活動を行いました」(2026年10月16日)https://x.com/shimazu_haruka/status/2111085490887901459
- 神戸経済ニュース「兵庫県議会、25年度予算案を賛成多数で可決 組み替え・修正の動議は否決」(2025年3月24日)https://news.kobekeizai.jp/blog-entry-19128.html
- 宝塚市選挙管理委員会「令和3年5月23日執行 兵庫県議会議員宝塚市選挙区補欠選挙」https://www.city.takarazuka.hyogo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/001/024/r3kengiho.pdf

